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大阪高等裁判所 昭和24年(を)2907号 判決 1949年11月25日

被告人

上田讓

主文

本件控訴は之を破棄する。

理由

本件控訴理由は末尾添付の控訴趣意書の通りである。

証人を尋問する場合に裁判所は被告人に対しこれらの者を尋問する機会を充分に与へなければならないこと弁護人所論の通りであつて原審公判調書について弁護人所論の証人尋問の跡をみるに原審裁判所は当該証人を申請した者の尋問が終つた後に被告人に対し尋問を促し以て証人尋問の機会を与へた趣旨の記載はない、しかしながら原審弁護人に対しては所論の証人各自につき尋問の機会を与へられ該弁護人は自ら尋問をなし或は尋問することなき旨答へた旨の記載がある被告人は法律に通じない場合が多く何時証人を如何にして尋問するか知らないのが通常であろうがかゝる被告人の不利益を保護するために弁護人制度が設けられてゐるのであつて即ち弁護人は被告人の包括的代理人たる地位が認められてゐるのである、従て原審裁判所が前記のように弁護人に証人尋問の機会を与へた以上それで充分であつてこれが即ち被告人のために尋問の機会を与へたことになるのであつて必ずしも弁護人と被告人とに重ねて尋問を促さなければならなぬ理由はない。論旨は採用出來ない。

よつて刑事訴訟法第三百九十六條を適用して主文の通り判決する。

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